2014年7月15日火曜日

「劇場じゃない場所で照明をする方法」

劇団愉快犯は、「劇場じゃない場所で照明をする方法」と題して、照明に関するワークショップを行いました。
この記事では、ワークショップで扱ったことと、参加者の反応、今後の展望について、クソ真面目に書こうと思います。  
【今回のワークショップで扱ったこと】 1.「劇場じゃない場所で舞台照明をする方法」 ――これを考えるにあたって、まずは演劇が行われる場所を、次の3種類に分けてみました。  
 (1)劇場  …演劇やパフォーマンスのために作られた空間。小劇場も含む。  照明機材は劇場に行けばあるし、灯体を吊るすための「バトン」もある。舞台照明をすることを想定している。
(2)まるで劇場じゃない空間 …演劇などに使われることを全く想定していない空間。ただの教室、野外など。  照明機材は当然、すべて持ち込み。
 (3)なんか中途半端な空間  …舞台っぽいものがあったり、中途半端に照明機材があったりするが、劇場とは言えない空間。一部の大学設備・講堂、学校の体育館、集会室など   この3種類の空間のうち、今回のワークショップでは、(2)(3)の空間で演劇をすることを想定して、「必要な照明機材を紹介し、実際に仕込んで明かりを点灯させてみる」ことを目標にしました。    

 2.舞台照明に必要なもの 「舞台照明に必要なものは、劇場でも劇場じゃない空間でも、全く同じ」と説明しました。 ・必要なものが備え付けてあり、仮設する必要のない空間=劇場、 ・必要なものが備え付けられていないので、持ち込み・仮設する必要のある空間=非劇場、 ということです。   では、その「必要なもの」とは、何でしょうか? 舞台照明に必要なものは、以下の「4点セット」です。

 (1)灯体 (2)調光ユニット (3)調光卓 (4)高いところから照らすためのもの   この4点セットについて、それぞれの役割と必要性を説明しました。
 (1)灯体  …舞台で使う「ライト」全般。裸電球や投光器も、演出に使うのであれば灯体と言えます。  今回のワークショップでは、灯体の種類については敢えて一切触れないようにしました。
 (2)調光ユニット  …灯体の明るさを変える=電圧を変えるための機器。大劇場では地下室などに巨大な調光ユニットがあって、普段見ることができません。今回のワークショップでは、持ち運び可能な小型調光ユニットとして、ELATION / DP-415 という機種を紹介しました。  ここで同時に、「LED灯体やムービングライトは、調光ユニットを内蔵している灯体」である、という補足を加えました。
 (3)調光卓  …調光ユニットだけがあっても、明るさを変えることはできません。調光ユニットに「明るさはこうしてね」という命令を送るためのコントローラーが必要で、それが調光卓です。 今回のワークショップでは、学生劇団でも買える価格帯の調光卓として、SCENE SETTER(シーンセッター) という機種を紹介しました。   ここで、調光卓と調光ユニットの関係を分かりやすくするため、調光卓をゲーム機のコントローラーに、調光ユニットをゲーム機本体にたとえた画像を見せました。これは参加者のウケが良かったように思います。   また、調光ユニットと調光卓が一体になった機器(ディムパックなど)を使っている劇団のために、補足を加えました。
  (4)高いところから照らすためのもの 劇場での照明は、「SS」や「コロガシ」など、役者の足元~背の高さから照らす一部の明かりを除いては、すべて役者より高い位置から照らされるものです。 劇場であれば照明機材を吊るすためのバトンが存在しますが、劇場でない空間では、何とかして少しでも高い位置から照らす工夫をしなければなりません。 この「高いところから照らすための工夫」は忘れられがちですが、劇場じゃない場所で照明をする場合、最も重要なものだと思います。

今回のワークショップでは、高いところから照らすための工夫として 「単管」「机の上に置く」「突っ張り棒」「照明スタンド」の4種類を紹介し、実際に「照明スタンド」を使って実践をしてみました。  
 2.実践  実践では、ここまでに紹介した「4点セット」を実際に会場(ただの会議室)に持ち込み、参加者有志に「仕込み」を体験してもらいました。   (画像:twitter)   参加者の皆さんは今まで全く照明を触ったことが無いか、「劇場のコンセントに差せば点灯する」ような恵まれた環境での照明経験ばかりの方々が多かったようで、多少戸惑いも見られましたが、フェーダーを上げて灯体が点灯するところまで仕込むことができました。  
3.DMX512信号について  「DMX512信号」とは、調光卓から調光ユニットへ命令を伝えるための信号の名前です。 現在の舞台照明システムは、安いものから高いものまで、ほとんどがこのDMX信号に対応しています。    DMX信号の特徴として、 ・世界共通の規格なので、劇場に元からある調光卓でなくても、持ち込んだ調光卓が使える ・調光ユニットも同様に、持ち込んだものと劇場備え付けのものを混ぜて使える ・同じ信号で、調光ユニット(明るさ)以外(例:ムービングライトの動き、スモークマシンのパワー)も操作できる   …といったものを紹介し、参加者の視野を広げることを試みました。

 4.実践その2  発展的な実践として、先ほどの「2.実践」で仕込んだ照明に、LED灯体を追加する実践を行いました。  LED灯体は、一般の電球を用いた灯体とは調光の仕組みが違うため、調光ユニットを内蔵しています。  

つまり、LED灯体の電源は調光ユニットのコンセントから取ってはいけない、ということです。  この点に注意して、LED灯体の電源を取り、調光ユニットからのDMX信号線を接続するところまでを実践しました。     【アンケートより】 今回、演劇祭運営側が実施したアンケートとは別に、当劇団独自のアンケートを実施させていただきました。その結果と分析を掲載します。
 項目1.このワークショップに参加しようと思ったきっかけは? ・大学で演劇を始めたので、いろいろなことを学ぶべきだと思ったから ・照明に関して詳しく知りたいと思ったから ・照明担当だが、照明を上手く扱えないことが悩みだった ・舞台や舞監をする上で照明の知識をあった方がよいと思ったから ・劇団愉快犯の演劇に興味があるから
→今回のワークショップでは、他団体に演技・基礎練習系のワークショップが多かったこともあってか、照明を専門としない方々の参加が多かったように感じます。他の部署や役者にも照明の素養があるに越したことはないですが、少しニッチな内容だったので、今回のワークショップは十分に楽しんでいただけなかったかもしれません。  
項目2.もし次があるとすれば、どのような内容を扱ってほしいですか? ・照明以外(発声など) ・仕込み図の書き方 ・機材のセッティング方法をより詳しく ・灯体の種類 ・もっと実践的なことを ・プランニングのコツや色の組み合わせなど ・スモークマシン ・ムービングライト ・照明効果、灯体の種類と光の関係   →仕込み図、セッティング方法、灯体の種類、プラン方法などに関しては、今回のワークショップで「意図的に避けた」部分です。90分という時間枠では、これらについて触れると混乱を招く危険性があると判断したためです。
しかし、確かにあまりに理論的というか、「外枠の知識」の解説に終始してしまい、実践を多く取り入れることができなかった点は反省すべきだと考えています。 今後は、同じテーマでするにしても、機材の持ち込み量などの関係から、やはりある程度照明機材のある空間(東山青少年活動センター創造活動室、人間座スタジオ、など)で行った方が、効率が良いのではないかと感じました。  
 【他団体の稽古に参加して】 当劇団メンバーで、他団体の稽古に参加した者の感想を掲載しておきます。   両方とも和気あいあいとした雰囲気で、参加して楽しかったです。 基礎練はスキルアップだけでなく、コミュニケーションの手段としても活用できそうだと思いました。団内で新入生に楽しく馴染んでもらうことなどに使えるのでは、と考えています。 いずれにせよ団内に持ち帰ってみんなにちょっと伝えてみたいと思いました。(実際にやるかどうかは団員個々の判断に任せようとは思いますが)
―参加した団体:劇団立命芸術劇場、劇団S.F.P

 団体名・執筆者名:劇団愉快犯/斎藤浩一郎

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